棟の両端部に連なる端『ケラバ』

屋根の雨漏りが付いていない側

ケラバとは切り妻屋根などの妻側、棟の両端部に連なる端のことです。軒の先が軒先、雨樋が付いていない側がケラバになります。出雲大社の屋根などはケラバが大きく張り出しています。最近では多様な住宅が建つようになりましたが、軒先とケラバが出た建物に「日本の家」をイメージする人も多いのではないでしょうか。
ケラバには主に3つの機能があると言われています。

1.日当たりを調整する
夏は日が高くなり、外壁や窓ガラスに直射日光が当たります。特に2階の室温はかなりのものになりますが、ケラバがあれば日陰を作り、温度上昇を抑えることができます。また、冬は日射角度が低くなるため、ケラバがあっても日当たりが失われることはありません。

2.外壁の劣化を防止する
直射日光や雨によって外壁は劣化します。しかし、ケラバがあれば直射日光や雨の悪影響を抑制できます。結果として外壁が長持ちします。

3.雨水の防止
ケラバは窓や外壁の上部にあることが多いので、雨水が吹き込むことを防ぎます。また、窓や外壁に当たる雨の量を減少させます。

ケラバがない建物はカッコイイ?

ヨーロッパの建物には組積造(そせきぞう。石やレンガ、ブロックなどを積み上げて作る建物)のものが多く見られます。
こういった建物は大抵ケラバが飛び出ていません。石川廣三『Q&A雨仕舞いのはなし』によれば、日本の伝統的な木造軸組工法では母屋(もや。垂木を支える水平材)を妻側から飛び出させればケラバは容易に作れますが、ヨーロッパの住宅では屋根勾配に沿って垂木を壁にかけます。このため妻側には垂木がかけられず、ケラバを出そうとするとケラバ垂木を取り付ける必要があります。

加えて石やレンガなどで作られた組積造は元々雨に強いという事情もあるので、ケラバがあまり取り付けられないのです。ツーバーフォーも屋根の造りは基本的に同じなので、北米やカナダではケラバの出ていない住宅が多いのだとか。
ケラバは屋根材の種類や端部の納まりによっては屋根裏面に水が回りやすいと言います。

だからと言ってケラバを除去したりすれば先に挙げた機能が失われますので、ケラバを採用する場合は雨仕舞いが重要になります。雨仕舞いがしっかりしていれば、家を雨や日差しから守る強い味方になってくれます。
ケラバなしのデザインの方が近代的なイメージがあり、特に洋風住宅で多いようですが、ケラバを採用しない、あるいは小さくする場合は機能面をチェックしてメリット・デメリットを把握しておいた方が良いでしょう。

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[コラム著者]矢野克己
矢野克己
一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。

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