足が不自由な人が住みやすい家

義足の人が気を使う家の設備とは

リビング

引き続き、障がい者スポーツ・アンプティサッカーの選手に話を聞き、障がい者にとって住みよい家を考えます。今回はフィールドプレーヤー。アンプティサッカーでは、片足に障がいを持っている人がプレーしています。今回はFCバンブルビー千葉の古城暁博選手にお話を伺いました。

古城 5歳の時、幼稚園に行く途中、交通事故で足を失いました。健常者の中でサッカーをやってきました。高校生の時は3年ほど障がい者陸上をやりました。健常者の中で、義足を着けて同じようにプレーしてましたね。アンプティサッカーでは、同じ条件、同じレベルの中で、それぞれに切断という障がいを持ちながらやっていくことに喜びを感じています。純粋に競技を楽しんでレベルアップを追求していく、それをみんなでやっていくことに楽しみを感じて、一緒にやっていきたいな、と思いました。

僕は他の切断の障がい者と比べて楽に生活できている方だと思うのですが、一番しんどいのはトイレです。しゃがむ姿勢が取れないので。
僕の場合は膝の長さが違うので、義足をはめると膝の長さがまったく変わってしまいます。すると洋式トイレでも前にスペースがないと、足がぶつかって座れません。多少広いと楽に使えます。
和式トイレはしゃがむ姿勢の維持ができません。何かに掴まらないといけないのですが、なかなかそういう設備がないので、昔は出かけた先に洋式トイレがあるか確認していました。和式トイレだったらそれなりに準備が必要でしたね。

玄関が高い家もありますよね。靴を履く時に腰掛けるとだいぶ楽になるので、座りやすい玄関があるといいな、と思いますね。ある程度広さが必要でしょうけど。
あとは、義足でフローリングを傷付けてしまうことがよくあります。傷付かない材質のフローリングがあるといいな、と思いますね。
それ以外は、健常者の中で生活してきたので、自分が合わせなければならない部分で苦に感じているところは少ないですね。

せめて自分の家では快適に生活したい、という希望があるようです。義足だとトイレが狭いとのことですが、あまり広いと逆に手摺に手が届かないこともあるので、適度な広さが求められます。特に集合住宅のトイレは縦配管でつながっていることがほとんどなので、あまり移動させることができません。便器を選ぶ際は、大きなエロンゲートサイズというものと、小さいシングルサイズのものがあるので、エロンゲートサイズは選ばないことです。シングルサイズの方がスペースが広くなります。

タンクレスというタイプを選ぶのも手です。スペース的にはあまり変わりませんが、タンクがなくなる分、体感的には広く感じます。
高さも、高齢者対応で立ちやすいように高くなっている便器もあります。ショールームで実際に座って体験すると良いでしょう。

玄関は建築基準法によって床下の高さが決まってきます。マンションだと高い玄関もありますが、あれは配管スペースを床上に確保するためです。配管を床下に埋めている場合は5cmぐらいの段差になっていたりします。特に賃貸の場合、平面図には玄関の高さは載っていません。不動産屋に確認したり、実際に見に行って確認していただいた方がいいと思います。玄関の高さを変えるのは難しいです。工夫するとすれば、介護用品の踏み台が良いでしょう。高さも様々なものが発売されています。最近では畳マットという商品もあります。座って靴を履いたりできます。

フローリングに関しては、ジーンズのように最初からダメージ加工が入ったフローリングもあります。無垢材のフローリングを敷けば、傷が“味”になります。車椅子や杖を使う場合は、ダブルPC加工の製品があります。傷が入りにくい加工がされているもので、車椅子用、キャスター用などから選べます。ただし、滑りやすいので要注意です。ペット用のダブルPC加工品では、犬が滑って転んで骨折する場合があるので、滑り止め加工がされているものもあります。ショールームなどに行って確認してみると良いでしょう。

障がい者に優しい家は、高齢者に優しい家でもあります。ぜひ自宅を落ち着ける場所にしたいものですね。
余談ですが、アンプティサッカーは大変迫力のあるスポーツです! 興味がある方にはぜひ生で見ていただきたいと思います。

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[コラム著者]矢野克己
矢野克己
一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。

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