足場の組み立て等作業主任者がいなければ足場工事はできない

多発する足場からの転落事故

業種別に死亡災害の統計を取ると、建設業の比率は約35%。建設業の労働者数は全産業の約10%に過ぎないので、建設業の死亡災害の比率は異常に高い数字です(厚生労働省「死亡災害報告」平成25年)。中でも墜落・転落事故は労働災害死亡者数の毎年40%前後を占めており、特に足場からの墜落は高い比率を占めています(建設業労働災害防止協会のデータより)。このため厚生労働省では平成27年7月1日より足場からの転落防止のための措置を強化、平成29年7月1日以降は足場の組み立て・解体・変更の作業を行うすべての人に特別教育の受講が義務付けられました。

さらに足場を扱う人がステップアップするために必須だと言われているのが、「足場の組み立て等作業主任者」の資格です(略して「足場作業主任者」と呼ばれることもあります)。足場の組み立て等作業主任者の技能講習を修了した者は、特別教育自体の受講が免除となります。

作業主任者がいなければ足場工事はできない

足場の組み立て等作業主任者は、労働安全衛生法に定められた国家資格。吊り足場、張り出し足場または高さが5m以上の構造の足場の組み立て、解体または変更の作業を行う場合において労働災害の防止、作業員の監督・指揮を行います。労働安全衛生法には「事業主は足場の組立て等作業主任者技能講習を修了した者のうちから作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮を行わせなければならない」と定められています。つまり、作業主任者がいなければそもそも工事は始められないということです。

ちなみに「5m以上の足場」という基準には、大半の足場工事が該当します。大規模工事では2人以上の作業主任者が専任されることもあります。このように作業主任者は重要な役割を担うので、誰でも受講できるわけではありません。受講には以下のような条件を満たしていることが必要になります(取得している資格によって科目の免除や講習料金に違いがあります)。

・満21歳以上で、足場作業に3年以上従事した経験を有する者
・満20歳以上で、大学、高専、高校、中学において土木、建築または造船に関する学科を専攻した者で、その後2年以上足場作業に従事した経験を有するもの

なお、講習内容は以下のようになっています。

・作業の方法に関する知識…7時間
・工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識…3時間
・作業者に対する教育等に関する知識…1.5時間
・関係法令…1.5時間
・学科試験…1時間

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[コラム著者]矢野克己
矢野克己
一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。

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