錆びにくい金属『ステンレス』

「錆びにくい」金属

ステンレスと言われればナイフやフォークを思い出すでしょうか。ステンレスは英語で「stainless steel」、直訳すれば「ステンレス鋼」。これが日本における正式名称でもあるのですが、一般的にはステンレスで通りますね。
「stainless」は「錆びない」、あるいは「錆びにくい」という意味。実際にステンレスは錆びにくい金属として知られています。

ステンレスは鉄にクロムやニッケルなどを加えた合金鋼です。鉄にクロムを添加することで表面に薄い酸化皮膜(不動態皮膜)を形成します。この酸化皮膜は100万分の3mm程度と非常に薄いのですが大変緻密で硬く、簡単には侵食されません。

仮に破壊・侵食されても、異物を除去し表面を酸素と触れさせればクロムが酸素と結合して皮膜を再生します。皮膜が耐食性を向上させるだけでなく、破壊されても再生するので、錆びにくいのです。
なお、ステンレスにも様々な種類がありますが、この文章では特に区別はしません。

ステンレスには幅広い用途がある

腐食に強く、強度に優れ、外見も美しいステンレスは至る所で利用されています。
建築物では外装・内装いずれでもステンレスは活用されています。特に屋根やファサードには古くから使われており、1930年に建てられたアメリカ合衆国ニューヨークのクライスラー・ビルディングでは段型尖塔の外装にステンレスが使われています。
クライスラー・ビルディングはマンハッタンの海岸地区にあるのですが、現在でも美しさを保っています。また、構造材には普通鋼(炭素鋼)が使われるのが一般的ですが、鉄筋コンクリート用のステンレス鉄筋もあり、塩害に対して耐久力に優れた建材として評価されています。

ステンレスは建物内部でも様々に活用されています。ドアノブ、換気口、窓枠、カーテンレール、蝶番など、長年にわたって錆びない金属部品はステンレス製かもしれません。ビルやマンションなどでは、入り口やエレベーター周辺で鏡面仕上げのステンレスが使われていることもあります。

他にもコンベンションセンターやドーム球場の屋根、橋梁の手摺りなどにステンレスが使われることがあります。いずれも美観の維持やメンテナンスフリーが目的となっています。近年では公園や公共施設の案内板のステンレス化も進んでいると言います。
他にも薬品や血液などに対して耐食性が必要な医療器具にステンレスは好んで使われますし、自動車やオートバイでも排気系の部品を中心に利用されています。鉄道車両では、通勤車両にステンレス車両が広く採用されています。

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[コラム著者]矢野克己
矢野克己
一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。

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