サインディング外壁の不良施工

メンテナンス不能な外壁がある!?

サイディング  反り

一般の方にとっては、建築の知識は縁遠いものだと思います。だからこそ職人や専門家、いわゆる「プロ」と呼ばれる人達に施工をお願いするわけですが、時にはプロであっても見逃している建築の落とし穴があります。すると「建築を知らない人が落とし穴に気づかない人に仕事を依頼する」という、最悪のパターンに陥ってしまうのです。今回はそんな事例をご紹介しましょう。

サイディング外壁の中には「塗ってはいけない壁」というものが存在します。正確には、塗るのは構わないのですが、すぐに剥がれてしまうのです。すぐに剥がれてしまえば、これは不良施工ですね。

塗ってはいけない壁は、普通に塗って良い壁と外見上はほとんど変わりません。見比べてみると、土台水切り板金の出幅が微妙に違うのですが、単独で見てもまずわからないでしょう。

実はこの2つのサイディング外壁は、工法が異なります。普通に塗って良い壁は「通気工法」、塗ってはいけない壁は「直貼り工法」が用いられているのです。

通気工法では、柱や間柱に透湿防水シートを貼ります。その上に通気胴口という細い部材を設置して、空間を持たせてサイディングを貼るのです。つまりサイディングと透湿防水シートの間には隙間があります。一方、直貼り工法の場合は、透湿防水シートの上に直接サイディングが貼られます。

通気工法の場合は、サイディングの上下を閉じてしまわず、必ず隙間を設けるようになっています。このため雨水が浸入したり、結露が生じても透湿防水シートで阻まれて下に流れ落ち、水切りを伝って外に排出されるようになっていますし、内部から生じた湿気も太陽光によって暖められ、上から流れ出るようになっているのです。

ところが直貼り工法では、家の中から出てきた湿気はすべてサイディングが吸ってしまいます。サイディングの裏面は塗装されないので、湿気をモロに吸ってしまうのです。湿気を吸ったサイディングは太陽光に当たると変形してしまいます。さらに、湿気は外に出ようとする時にサイディングを通るので、外の塗膜が剥がれてしまうのです。塗料は外からの防水には強いのですが、内部から圧力がかかると膨れたり剥がれたりするので、部材に水分が含まれるのは御法度です。

この現象は何度塗り替えても繰り返されるので、メンテナンスが不可能ということになります。だから直貼り工法のサイディング外壁は「塗ってはいけない」のです。
なぜ塗ってはいけない壁を塗ってしまうのかというと、特にリフォームの場合は塗装の専門業者に頼むことが多いからです。塗装の専門業者は塗装のプロではあるのですが、建築のプロではありません。「塗ってはいけない壁」のことを知らなければ、塗ってしまいますよね。

また、通気工法であっても施工法を間違えて軒天を閉じてしまうと湿気が逃げられなくなり、同じことが起こります。「知っておくこと」の重要性がわかっていただけるかと思います。

ブログ村ランキングアップへご協力お願いします。
にほんブログ村 住まいブログへ
にほんブログ村

[コラム著者]矢野克己
矢野克己
一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。

「見積もりの根拠がわからない」「見積もりの診断をして欲しい」という場合、
市民住まい向上委員会へご連絡ください。
市民住まい向上委員会では年間5,000人以上の方の相談を受けています。