メーカーが対応してくれない外壁材・屋根材のトラブル

薄皮がめくれるように剥がれる外壁

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屋根・外壁塗装に関するお問い合わせの中には、深刻な問題に発展するものがあります。「不良品なのにメーカーがリコールを出していない商品」を巡る問題はその1つです。

外壁材や屋根材が、薄皮がめくれるように剥離していく問題を訴えてくる消費者の方がいらっしゃいます。塗膜ではなく、材料そのものが剥離していくのです。この問題には「抄造法(しょうぞうほう)」と呼ばれる製造方法が深く関わっています。

抄造法とは、1〜2mmの厚さの板を重ねて加圧成形する方法です。ちょうどバームクーヘンを思い浮かべていただくとイメージしやすいと思います。屋根材ではスレートに使用されましたが、元々吸水に弱いという弱点があります。この技法を用いて外壁を作ると、薄皮の隙間に水が入り込んで、表面が剥がれてしまうことがあるのです。外壁そのものが剥がれてしまうのですから、塗装をし直しても修繕することはできません。
これは完全な欠陥品と言って良い製品です。ところが、現在の建築基準法では、抄造法で成形された外壁材は欠陥品ではないのです。

少し詳しい方なら、「瑕疵担保責任があるだろう。品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)があるじゃないか」とおっしゃるかもしれません。ところが、品確法では10年間雨漏りしなければ商品として欠陥品ではない、と認められているのです。確かに、抄造法で成形された外壁は雨漏りはしません。しかし、再塗装もメンテナンスも一切不可能な商品なのです。実際には外壁を張り替えるしか修繕する方法はありません。

すると品確法で守られるのはメーカー側で、消費者は守られないことになります。メーカー側は「雨漏りはしないから」ということで、リコールも出していないのです。こうなると困るのは消費者の皆さんということになります。

メーカー側にしてみれば、1件でも認めてしまえばすべての案件に対応しなければならなくなります。現在では抄造法による外壁の製造は中止されているので、「いずれはクレームもなくなるだろうから、それまで法的責任はないということで乗り切ろう」ということなのでしょう。
しかし、消費者の側にしてみれば、家を建てる時に「外壁が抄造法で作られているかどうか」を気にした人がいるでしょうか。きっと「良い商品ですから」と言われて採用したのではないかと思います。

こういったトラブルに関しては、メーカーが責任を負わない以上、家の持ち主自身が対応していくしかないのです。

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[コラム著者]矢野克己
矢野克己
一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。

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