寝たきりを防ぐ住まいとは

大怪我より小さな怪我を防ぐことが大事

老人

矢野 家には定期的に手を入れますが、寿命があります。健康寿命というのもあるそうですね。

井上 9月になると平均寿命が発表されるのですが、2014年に発表された平均寿命は男性が80.2歳、女性が86.61歳になっています。これは生命が尽きるまでの平均寿命です。一方、WHO(世界保健機関)では健康平均寿命というものを発表しています。健康寿命とは、第三者にサポートされなくても制限なく日常生活が送れる年齢のことです。介護をされない、寝たきりになっていない人。これは男性が70.42歳、女性が73.6歳なんです。つまり女性で言うと、介護されたり寝たきりになる年月は13年もある。男性は9年。

矢野 長いですね……。

井上 平均寿命を延ばすことも大事だと思いますが、自足歩行ができて、自分で考えて動ける人、日常生活が送れる人を増やすには、健康な体も必要ですし、格納する場所として家も大事になってきます。特に高齢者になってくると家にいる時間が増えてきますから、その場所が快適であるかどうかは健康寿命にも関わってくるはずです。例えばちょっとした段差を常にまたぐ家、いわゆるバリアアリーな家に住んでいれば、健康寿命は落ちにくくなるのです。

斉藤 車椅子を使われる方がいる家はバリアフリーで良いけれども、健康であるためにはわざと障害を少し残してやると良いのですね。

井上 もちろん、女性の場合は平均13年も介護が必要な期間があるのですから、その時は苦労するのではなく、バリアフリーにした方がいいですね。ライフスタイルに合わせた家と健康の関係が必要になってくるのではないでしょうか。

矢野 おっしゃる通りです。

斉藤 家と健康は密接に関係があるんですね。生きているうちは元気良く、とは誰しも思っていることでしょうけど。しかし、男女とも10年ぐらいは他人のお世話にならなければならないとは。他人事ではないですね。

矢野 我々もそちらの年齢に近づいていますから(笑)。

井上 一番怖いのは、70代の人達に起こる「廃用症候群」です。廃用症候群とは、長期間体を動かさないことによってその体の部位の機能が低下すること。1週間動かさないと、10%筋力が低下すると言われています。関節も3週間で硬くなる。例えば老人が転倒して足を骨折し、3週間足を吊ったとしたら、関節値は30%ぐらいダウンしますし、筋肉値は10%落ちるのです。それが寝たきりの第一歩になることもあります。

斉藤 誰しもそうなり得る。だから日頃からケアが大事なんですね。

井上 そうです。大きな怪我を怖がるのではなく、ちょっとした骨折などを防ぐことが健康寿命を延ばす第一歩なんです。

矢野 家もちょっとした所から傷んできます。

斉藤 「家と体のメンテナンス講座」の情報には、市民住まい向上委員会のホームページからアクセスできるんですね。皆さんにイベントに参加していただいて、体のこと、家のことを合わせて考えていただく機会にしてほしいですね。

矢野 あと、FACさんとは「防犯スポーツ教室」も一緒にやらせていただいています。対象は子供さんです。

井上 FACは川崎市を拠点に地域スポーツクラブをやっています。学校に行って体育指導をしたり、小学校4~5校の合同スポーツイベントをやっているので、その中で防犯スポーツ教室を行っています。

斉藤 防犯スポーツ教室の内容は?

矢野 私は防犯設備士の資格を持っていますが、スポーツの資格は持っておりません。そこを井上さんにご協力いただいています。

井上 私はクラブマネージャーという日本体育協会の資格を持っていて、スポーツプログラムをつくることができます。また、関わっているアスリート達、例えばトライアスロンの鎌田和明くんや水球の日本代表選手などがサポートしてくれています。スポーツとして正しいことを教えながら、防犯意識をきちんと持っていただく。しかも、地域の学校の子供達を対象にしたイベントなので、親達が見に来ます。その親達にも理解してもらうことができます。それ以外にも様々な所に呼んでいただけているので、徐々にもっときちんとした体育プログラムとして成立させたいですね。防犯に関しては、さらに楽しみながらできるようにして広げられたら、と思っています。

斉藤 これはかなり色々な可能性がありそうですね。

矢野 最近は事件が多いので親御さんは心配ですよね。子供は未来の宝物ですから、きちんと守ってあげなくてはいけない。これは大人の責任、役目じゃないかと思います。

斉藤 これからもコラボレーションで様々な引き出しが出てきそうですね。新しいコラボイベントがあれば番組でもご紹介していきたいと思います。

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[コラム著者]矢野克己
矢野克己
一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。

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