再塗装を台なしにする層間剥離問題

プロでもわかりづらい瓦の製造法

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「不良品なのにメーカーがリコールを出していない商品」についてもう1つ、屋根材に関する事例もご紹介しておきましょう。

やはり、抄造法で成形されたスレート瓦の表面が次々と剥がれていくケースです。買った当初は結構な値段だった瓦が、バームクーヘンのように表面からバラバラと剥がれてしまう。この現象は新築の家でも起こり、層間剥離と呼ばれています(通常は塗膜間で剥離したり密着不良を起こすことを言いますが、この場合は抄造法で重ねられた層そのものが剥離しているわけです)。知っていればこのような瓦を指定する人はいないでしょうが、実際には屋根材の性質まで調べて発注する人はあまりいません。外壁の場合と同じように、メーカーに対応をお願いしても「不良品ではありませんので」と言って取り合ってもらえません。

以前の屋根材はアスベスト材を使って強度を高めていましたが、2004年に製造が禁止されました。アスベストは中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚などを引き起こすことが明らかになったからです。次第に使用されなくなってきたアスベスト材に代わって登場したのが抄造法でした。層間剥離を起こすという欠陥が最初からわかっていれば問題は防げたのでしょうが、残念ながら世に出回ってしまい、現在では多くの人が被害に苦しんでいます。

また、瓦が抄造法で作られたものかそうでないのかは、素人目にはまずわかりません。見た目はほとんど変わらないのです。プロならば商品の幅などを見て判断できることがありますが、ある程度詳しい人でもわからない人の方が多いでしょう。メーカー側は層間剥離をすることを想定していなかったので、仕様書にも「塗らないでください」とは書かれていません。ということは、塗装業者でも「(結局剥離するので)塗ってはいけない」ということがわからない場合が多いということです。再塗装を頼めば無駄な出費をすることになります。古い瓦の場合は製造法を確認した方がいいでしょう。

得てして商品というものは、販売から年数が経たないと実態がわからないものです。抄造法の場合も数年経ってから問題が発覚し、ようやく製造が中止されました。現在では一体成形法というカステラのような成形法が採用されているので、層間剥離を起こすことはなくなっています。

大部分の問題は“知識”で防げる!

前回と今回ご紹介したケースは、消費者の知らないところで欠陥品が使われ、メーカー側が責任を取ろうとしない最悪のケースでした。しかし、このコラムでご紹介する事例の多くは、予防が可能なものばかりです。必要なのは知識です。ぜひこれからの住まい作り、リフォームに役立てていただきたいと思います。

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[コラム著者]矢野克己
矢野克己
一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。

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