水切れを良くする部材『軒先水切』

水切れを良くする部材

水切と呼ばれる役物(特定の場所に使用される特殊な形状の部材)があります。建物外部の突き出した箇所で雨水が下端に回り込まないようにする部材のことです。
窓や出入り口の下枠に付けられる細い溝のことも水切と呼ばれることがあります。木造建築の場合は土台と基礎の間に土台水切りが設けられます。
水切は雨仕舞用金物などと呼ばれることもあります。一般的には庇の先端や窓の下枠部分などにL字型の金具を取り付けることで水の浸入を防いだり、壁が汚れないようにします。軒先に取り付けられる水切は軒先水切と呼ばれます。
軒先水切は様々な材質で作られます。安価なトタン製のものや、ガルバリウム鋼板やステンレスといった耐久性の高い材質のものもあります。形状も様々で、屋根の勾配に形を合わせたものや雪国用のもの、捨唐草型のものなどが販売されています。

唐草とは

軒先水切とは別に、軒先に取り付けられる板金のことを「唐草」と呼ぶ場合もあります。唐草は雨仕舞いも兼ねた納め用部材。ちょっとややこしいのですが、軒先水切とほとんど同一視されることもあれば、「軒先の水切金物(唐草タイプ)」などと注意書きがされていることもあります。

これは、軒先水切には様々なタイプのものが登場したので、「唐草」と呼ばれる典型的な水切部材をその1種として区別したのでしょう。
「唐草」と呼ばれるタイプは板の上端が外側に、下端が内側に曲げられたものが多いでしょうか。唐草も軒先から垂れ下がることで、屋根面を流れてきた水を下に流し、軒先の木材を濡れないように保護するわけです。
軒先では金属板を屋根材の下に敷くこともありますが、この金属板は「捨板」「捨唐草」と呼ばれることがあります。捨板は唐草を固定するために使われます。捨板と唐草が一体になっている軒先水切は捨唐草型、捨唐草と呼ばれることもあります。

ちなみに軒先水切が「唐草」と呼ばれるのは、昔の名残です。「唐草模様」と言えば、蔦植物や葉や茎が伸びたり絡んだりしているところを図案化したもので、「唐草」とはあまり似ていません。
しかも水切は板金でできているので、草とはあまり関連がないように思えます。
しかし、昔の建築では軒先などに葺く瓦の先端に唐草模様が付いていることが多かったのだとか。それで軒先やケラバ(切妻屋根や片流れ屋根の斜めになっている側の外壁から飛び出ている部分)に取り付けられる役物のことも唐草と呼ぶようになったそうです。

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[コラム著者]矢野克己
矢野克己
一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。

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