寒い時の塗装について

正確な作業が期待できるのは冬場

塗装

冬は塗装作業を敬遠することが多い傾向がある時期です。雪が降るだろう時期でもある2月の塗装は避けられる傾向にあります。「冬場に外作業なんて」という心理的な印象が多いのかもしれません。だからなのか、「二八(にっぱち)には売上が下がる」という商売の法則があるのでしょうね。しかし、外回りの工事に関しては冬ならではの利点もあるのです。

まず、外装塗装などの際は建物に足場を組んで、飛散防止のネットを掛けます。実は、この中は暖かくなるのです。窓にも養生用のビニールを貼って汚さないようにするので、ペアガラスのような効果が出て、室内も暖かくなります。

「塗装工事はいつ行うのがいいのでしょう?」とよく聞かれますが、考え方は様々です。塗料の乾きやすさを考えれば春か秋、気候の良い時に塗るべきでしょう。しかし、職人目線で考えると、春や秋は不動産屋さんの入れ替えの時期。リフォームや原状回復で、職人さんも年度末は忙しくなります。すると職人さんも人間ですから、仕事が立て込んでいると「早く終わらせて次に行かないと」という心理になる。そうなると塗装に良い時期と言ってよいのか、微妙になってきますね。

さらに、塗料には守るべき乾燥時間があります。冬場は塗料が乾きにくくなる。逆に言えば、しっかりとした塗り重ね乾燥時間がどうしても必要になるのです。夏場だと表面はすぐに乾くので、乾燥時間を無視して塗ろうと思えば塗れてしまいますが、冬場はそうは行きません。その代わり、乾くまでに他の作業をすることもできます。工期は長くなりますが、実は良質な工事ができるのが冬場なのです。職人さんは乾くまでの間に他の現場に行くわけにもいきませんから、破風板など細かいところまできちんと見てくれたりすることが期待できます。夏場に比べると冬場の塗装可能時間は半減します。その空き時間を下地調整などに充てれば良質な工事になるわけです。

したがって冬場の塗装は避けなくても良いという考えもあります。意外なところに盲点があるので、世間一般の常識が良いとは限らないのです。
ただし、冬場のデメリットも理解しておきましょう。まず、温度が下がりすぎると塗装はできません(塗料ごとに塗装可能温度が決まっています)。冬は日が落ちるのも早いですね。夕方に塗装すると夜まで乾かず、特に屋根などは夜露が下りたりするので、ブラッシング(かぶり、艶引け)が起こることもあります。

冬場は塗料が乾きにくい分、正確な塗装工事が必要になります。また、冬になると凍害が起きます。防水が切れた屋根には水が染み込みます。これが凍ると膨張して、瓦を割ってしまうのです。春に気づかなければ梅雨に雨漏りしたりするので、やはり冬場に塗装し直しておいた方が良いということになります。

賃貸オーナーの方は、3~4月は入居者が増える時期なので、冬に綺麗にしておけば入居率アップも期待できます。
もちろん、腕の良い一級塗装技能士の方にお願いすることが前提です。優れた職人さんから仕事が埋まっていくのが普通ですが、冬場は繁忙期ではないので見付けやすいと思います。

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[コラム著者]矢野克己
矢野克己
一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。

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