人にやさしい建材『波形スレート』

断面が波形になったスレート

スレートと言えば平らな板状の屋根材を思い浮かべるかもしれませんが、波型(波形)のスレートも広く使われています。スレートの原義は「粘板岩の石盤」で、粘板岩を板状に加工して作るスレートはヨーロッパでは古くから使われています(天然スレート)。
高級感があり、自然な風合いも美しいのですが、価格も施工費用も高くなってしまうため、日本ではあまり使用されていません。
日本で大部分を占めるのは主にセメントと繊維材料から作られた化粧スレートと呼ばれるものです。表面は化粧加工されており、カラーバリエーションが豊富なのが特徴となっています。
波形スレートは断面の形状が波の形をしたものです。継ぎ目や重ね部分が目立つという欠点があり、一般住宅ではあまり使われていません。
その代わり施工性は高いので、倉庫や工場など、面積の大きな屋根によく使用されます。

波型スレートは壁にも使える

波形スレートは屋根だけでなく、壁にも使われることがあります。倉庫などの壁が細かい波のような形をした建材で作られていたら、それは波形スレートかもしれません。一般的には、屋根に使われる波形スレートは波が大きく加工されています。波型スレートは法定不燃材料に認定されており、他の材料と組み合わせれば各種防火・耐火構造となります。断熱性だけでなく、耐候性・耐久性にも優れています。
他にもカラフルな建築物に対応するために合成樹脂塗料を塗装したカラースレートや、建物の構造に波形スレートを合わせるための役物スレートなどが存在します。例えば屋根の端には大きく曲がった波形スレートを付け足し、雨水を下に垂らすように誘導することがあります。

波型スレートにも無縁ではないアスベスト問題

スレート屋根は昭和時代に広く普及したと言われています。
当初のスレートにはアスベスト(石綿)が含まれていたため、廃棄するときに飛散するアスベスト繊維が健康被害を引き起こすようになりました。2006年9月からは製造・使用等が全面的に禁止されていますが、現在でもアスベストが使用されたスレートは一部の建物で使われています。この状況は波形スレートでも同じです。
傷んできた波形スレートを再生するには再塗装や葺き替えなどをしなければなりませんが、アスベストが使用されている場合は飛散を防止しなければならないため、葺き替えだとコストが跳ね上がります。このため傷みが激しい波形スレートの場合はカバー工法が選択されることが多いようです(メンテナンスが行き届いていれば、再塗装だけで再生する場合もあります)。

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[コラム著者]矢野克己
矢野克己
一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。

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