優れた職人を見抜く簡単な方法とは?

依頼する側にも準備が必要な理由

塗装

斉藤 土屋さんのように技術を高めたいという方は多いのでしょうか。

土屋 あまり出会ったことがないですね。

斉藤 土屋さんのように勉強を重ねる人もいれば、そうでない人もいる。

土屋 勉強会でもお話しさせていただいているのですが、優良施工を行ってくれる方もいる一方で、不良施工となる塗装をしてしまう業者さんもいます。同業の方に話を聞いてみると、材料を使い回すとか、塗る回数を減らすとか、規定の量の塗料を使わないで工事を終わらせてしまうことがあるようです。

斉藤 お願いしている方にはわからないですよね。

矢野 実際に工事が始まってからでないとわからない場合がありますね。

斉藤 外壁などは10年ぐらい持たせたいわけですが、優良施工と不良施工ではどれぐらい差があるのでしょうか。

土屋 正直な話、仕上がった時はどちらも綺麗です。なかなか工事が終わった段階では判断できない。しかし、早い場合は数カ月で剥がれたりするようです。町中を歩いているとほとんどの建物でどこかしら塗装が剥がれていると思いますが、それは正しい知識がないまま工事をしてしまったからなんです。建物を見れば、明確に差が出て来ます。

斉藤 依頼する側も、良い業者に依頼する方法を勉強したり、情報を仕入れたりしなければなりませんね。

矢野 見極めていかねばなりません。以前お話ししたように、一級塗装技能士のテストの中で「どのように作業スペースを綺麗にしているか」を見ることがあります。片付ける際は工事している家の中にネタ場という場所を作って、塗料などをしまいます。そこがいかに綺麗に片付けられているかを見れば、良い職人さんを見極める情報の一つになります。

斉藤 しかし、工事が始まってから見極めても、後の祭りになりかねませんね。

土屋 「そろそろウチも工事しようかな」と思った時に、近くで工事をしていた業者さんに「ウチも塗ってくれませんか」と声をかける場合もあると思います。その時にネタ場を覗いてみても良いでしょう。あと、使っている車がきちんと整理整頓されているかどうか。そういったところを見ていただきたいですね。もう一つ、工事が始まってからの話ですが、塗料には一液のタイプ(主材のみ)と二液のタイプ(主材と硬化剤を使う)があります。実は、二液タイプのものを目分量で使う職人さんが多くて、硬化不良がよく起こるのです。すると塗膜がきちんと保たれずに、不良施工の原因となります。ですからネタ場を見る時は計量器があるかを確かめてください。誰でもわかる部分ですから、注目してほしいですね。
下塗りの時にも職人の腕を見抜くことができます。下塗り塗料は白が多いので、壁の平らな部分は当然真っ白になります。しかし、細かい部分は手抜きをされることが多いのです。普段は見ない裏側や細かい隙間には小さな刷毛を使わなければいけないのですが、ここを手抜きする職人さんが非常に多いので、注意が必要です。

斉藤 チェックもしなければいけないということですね。見落としを見つけた場合は「ここも塗ってください」と言ってよいのでしょうか?

矢野 全然いいと思います。

土屋 言っていただきたいですね。もう一つ、現場で塗装している職人から見て良い職人か悪い職人かを判断する場合は、作業着の汚れ具合を見ることがあります。腕のいい職人さんの場合は、小さな範囲に点々と汚れが付きます。技術がない職人さんだと、作業着がベチャッと大きく汚れているケースが多いです。

矢野 慣れていない人だと、自分がどこまで塗ったかすら忘れてズボンを壁にこすりつけてしまい、手直しが必要になったりします。

斉藤 一級塗装技能士の資格を持っていれば安心してよいのでしょうか?

土屋 一級塗装技能士の中でもいい一級塗装技能士を確実に選ぼうと思ったら、先ほど申し上げたような点に注目していただきたいと思います。

矢野 やはり頼む側も少し勉強していただきたいですね。人任せにせず、自分に責任を持っていただきたいと思います。最終的に業者さんを選ぶのは家の方ですから。

斉藤 何から勉強すればよいかわからない方は、矢野さんや土屋さんが開催しているセミナーなどに行っていただければより確実ですね。ちゃんと知識があれば、優れた職人さんを見抜くこともできる。

土屋 私の名刺には「塗装とは、心を映す鏡です」と書いてあるのですが、塗装は職人さんの心一つで良し悪しが決まります。自分との葛藤の中で作業をしている職人さんも多いでしょう。私も自分に負けないように、心と向き合って仕上げていこう、と思っています。

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[コラム著者]矢野克己
矢野克己
一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。

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